チリ出身のアーティスト、アルフレド・ジャーによるインスタレーション作品《The Garden of Good and Evil》(2017)を記録・考察した作品集。本書は、イギリスのヨークシャー・スカルプチャー・パークで発表された同作を中心に、その構想と空間体験を包括的に紹介する公式カタログとして刊行された。
1980年代以降、写真、映像、建築的インスタレーションといった多様な表現を通じて、政治権力、メディア、不可視化された暴力、人権の問題に取り組んできたアルフレド・ジャー。本書で扱われる《The Garden of Good and Evil》は、CIAによる秘密拘禁施設(ブラック・サイト)を参照しながら、「庭」という一見穏やかな風景の中に、抑圧と暴力の構造を潜ませる作品である。
本書には、作品が設置された風景を四季折々に捉えた豊富な図版を収録し、鑑賞者が空間を歩く体験や、発見と不安が交錯する感覚を追体験できる構成がとられている。また、キュレーターや研究者によるテキストを通じて、作品の政治的背景、詩的参照、そして「見えないものをいかに可視化するか」というジャーの一貫した問題意識が明らかにされる。
出来事を直接的に表象することを避け、むしろ沈黙や欠如、構造そのものを提示するジャーの方法論は、本書においても明確に示されている。本書は、《The Garden of Good and Evil》という単一作品を軸に、アルフレド・ジャーの芸術実践が持つ倫理的・政治的射程を深く理解するための重要な資料である。
Yorkshire Sculpture Park / 160ページ / ハードカバー / 260 x 190 mm / 2019年