2020年に訪れたある昆虫館にて、欠損やラベルの紛失など、様々な理由で行き場のない759体の昆虫標本に出会いました。その昆虫標本には、博物館などの文化施設をめぐるアーカイブやコレクションの問題などが濃縮されているようにみえました。また、そこにはかつて誰かが熱心に昆虫採集へと時間を費やした思いや、その個体たちがみていた過去の世界の姿を感じることもできました。
今回のプロジェクトでは、行き場のない昆虫たちを記録するために標本図鑑を作りたいと考えています。それは、昆虫たちが個別の個体として生きていたことを証明するものです。
- 本書では、かつての昆虫少年たちの眼差しや、昆虫を今まで残してきた人たちの想いを、昆虫たちの姿と共に収めることを試みた。図鑑のようでもありながら、誰かの古いアルバムのようでもある本書が多くの人の手に届き、昆虫たちが居たことを記せるものとなれば嬉しい。-
(著者のテキストより)
paper company / 360ページ / ハードカバー / 210 x 182 mm / 2022年