








港町のそのヤーグヮーには、いろんな男達が集まって来る。港湾で働く者、漁から帰って来たばかりのウミンチュ、そして失業者…。ヌチャーシーをして、酒を買ったり、あるいは、金のある者が出したりして、ひとときのやすらぎを求めて、男達が集まって来る。まさに男だけの世界である。
時には、大声で「赤木圭一郎」を唄い、昔をなつかしみ、そして、たまには、なぐり合いのケンカをしたり。
「いい年をした、おっさんが…」と、思う時もあるが、彼らには彼らにしかわからない、男のキズナとやらがあるので、私はいつも黙って、ただ、ながめている。
一見、コワモテのおじさん達ではあるが、私は彼らの中に実に自分に正直に生きている素直さを感じて、なぜか、心ひかれる。
(本文テキスト「港町エレジー」より)
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作家の自費出版 / 46ページ / ソフトカバー / 210 x 300 mm / 1990年